ヒトには2つの性染色体があり、1つはX染色体、もう1つはY染色体です。ヒトの各細胞には、通常23対の染色体があり、性染色体はそのうちの1対となります。X染色体は約1億5500万塩基対から成り、細胞内の全DNAの約5%を占めています。
通常、女性はX染色体を2つ、男性はX染色体1つとY染色体1つを持っています。
女性は両親から1つずつX染色体を受け継ぎ、男性は母親からX染色体、父親からY染色体を受け継ぎます。女性では、胚発生の初期に卵細胞以外の細胞で2つのX染色体のうち1つがランダムかつ生涯不活性化されます。このX染色体の不活性化(ライオニゼーションとも呼ばれる)によって、女性も男性と同様に各細胞において機能しているX染色体はそれぞれ1つとなります。X染色体の不活性化は「細胞ごとに」ランダムに起こります。つまり、一部の細胞では母親から受け継いだX染色体が活性化し、他の細胞では父親から受け継いだ X 染色体が活性化しています。
X染色体上の一部の遺伝子には、X染色体が不活性化していても働くものがあります。これらの遺伝子の多くは、X染色体の各腕の末端にある「偽常染色体領域」と呼ばれる領域に存在しています。X染色体の多くの遺伝子はX染色体のみにある固有の遺伝子ですが、偽常染色体領域と呼ばれる領域にある遺伝子はX染色体とY染色体の両方に共通して存在しているため、男性も女性もこれらの遺伝子のコピーを2つずつ持つことになります。この偽常染色体領域にある遺伝子は正常な発達に必要な遺伝子です。
X染色体には、タンパク質の設計図となる遺伝子が900~1,400個含まれていると考えられています。これらのタンパク質は、体内でさまざまな役割を果たしています。
X染色体の変化に関連する疾患
X染色体の構造やコピー数の変化に関連した疾患として、以下の疾患などが挙げられます。
- 46,XX精巣性性分化疾患
- 48,XXXY症候群
- 48,XXYY症候群
- 49,XXXXY症候群
- 慢性特発性偽性腸閉塞症(非遺伝性の病型も有り)
- クラインフェルター症候群
- 線状皮膚欠損を伴う小眼球症
- トリソミーX(トリプルX症候群)
- ターナー症候群
- X連鎖性先端巨大症